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「旅立ちはきっと晴れ」





それからどれ位の時間が経っていたのか、
私は頬に冷たいものが当たるのを感じ、目を覚ました。
ザーッと降り注ぐ雨の音が耳に痛いくらいの土砂降りだ。

「うぅ…頭いてぇー…」

私はゆっくりと身体を起こし、
とりあえず自分の身体を見渡してみる。

儀式の間感じていた、あの重々しい空気も無く、
特に目立った外傷も見当たらない。

足元の魔方陣も消えている事から、どうやら儀式は終了したようだ。

「うーん…何か腑に落ちないなぁ…」

そして、ふと視線をあげた私は、
信じられない光景に我が目を疑った。

「町が…無い!?」

先ほどまで確かにあった家や畑などすべてのものが破壊し尽くされ、
人々はそこら中に正常ではない形で倒れており、崩れ去った建物の瓦礫に所々埋もれ、
立ち並んでいた緑色の木々は茶色に染まっていたり、変な場所から折れていたり。

とてもじゃないけど普通は考えられないような、
おぞましい光景が広がっているでは無いか…。

だがしかし、その様な異常な光景にも拘らず、
それ以上に私が感じた不快感ががあった………。

「……凄い血の臭い……」

これだけの雨が降っていると言うのに、拭い去られない血の臭い。
この町にいったい何が起きたのか…それを物語っている気がした…。

「なんなのよ…これ…」

勿論、意識を失っていた私には何が起きたのかわかる筈も無く、
ただ無力にその場に立ち尽くすしかなかった。

「お…おぉ…生き残りが居たのか」

背後から、苦しそうに話す男の声が聞こえた。
振り返ってみると、そこにはあのキモイ神父がいた。

「ちょっと…アンタ大丈夫あの!?」

私は神父の元へと駆け寄り声をかけてみる。
彼は酷い怪我を負っているのが一目でわかるほどの、
大量の出血をしているではないか。

「いったいなにがあったの?」

私が声をかけると、神父はゆっくりと顔を上げていく。

「た、助かります…。実は…」

が、私と目が合った途端に彼の顔は見る見る青ざめていき、
何故だかよくわからないが急に怯えたはじめ…。

「ひ!ひ〜!!!ゆ!許してくれ!!!た、頼む殺さないでくれ!!!」

神父は這いつくばった状態のまま、身体をひきずりながら逃げだしていった。

「どういう…こと?何で私がアンタ何か殺さなきゃならない訳…?」

彼のただならぬ怯え方に、私は怒りと…そして恐怖を感じた。

「町がこんな状態ならもうみんなは…」

私は力無くその場に座り込んでいた。
もうどうしようもない。
自分の希望に満ち溢れていたはずの未来が、
こんな地獄絵図に変わるだなんて…。

私は強烈な脱力感に襲われるのだった。

だが、それからしばらくして、ふと思う事があった。

「はっ!そういえばおばさんは!?」

私は勢い良く立ち上がると、無我夢中でおばさんの家へと走った。
そこら中が瓦礫だらけで、大きく迂回しながら行くしか方法は無かった。

がむしゃらに走る私の目には、次々と、幾つもの死体が目に付いた。

「いったい誰がこんな事を………」

どれも並大抵の人間が出来る様な死体ではなかった。

「かなり滑稽ね…」

なんとも耐え難い苦痛を感じながらも、
私はそれをこらえ、この場所から駆け抜けた。

そして数十分後、どうにかこうにかおばさんの家に辿り着く事が出来た。
おばさんの家は完全では無いものの、原形だけは取り留めている。

「開かない…」

押しても引いても、壁が歪んでいるのかドアは開かない。
私は力いっぱい、何度も何度もドアに体当たりをし、
かなり強引にドアをこじあける事に成功した。

「おばさん!!」

中に入ると、壁やら床やらに大量の血が飛び散っている。

「うぅ…」

臭いもかなりきつく、多少の吐き気ももよおしたが、
私はそれをこらえおばさんを探す。

「おばさん!どこ!?」

これでは絶望的かもしれない…。
そんな思いも過ぎるが、
私はそれでも僅かな希望にかけて声をあげ続ける。

「エ…リス…かぃ?」

すると、茶の間の方からおばさんの声が聞こえた。

「そっちね!?今行くから待ってて!」

茶の間には、おばさんがいつものようにゆったりと木の椅子に座っていた。
何故か……私の方に背を向けて………。

「良かった…無事で。怪我してない?」

私がおばさんの傍に行こうとすると、

「来るんじゃない!」

おばさんはいつもとは違う強い調子で叫ぶ。
私はそれに驚き動きを完全に止めてしまう…。

「エリス。町の被害は見たね?」

しかし、すぐにいつもの優しい口調で、私に話し掛けてくれた。

ちょっと先程のショックで声は出なかったが、しっかりと頷く。

「あれはね、お前の使い魔がやったことなんだ。
神父様が使い魔を呼び出したまでは良かったんだけど、
やはり人に神は操れなかったようだね」

「私の…使い魔が…?…か…み?…どう言う事?」

「…アンタの中に眠っていたのは、悪魔神【サタン】だったんだよ。」

「あく……ま?」

「前にアンタは親に捨てられたって言ったけどね。
…本当は二人は、殺されたんだよ」

「殺された…!」

「そう、そしてアンタはその父さんと母さんの本当の子供でもない。
昔、アンタの父さんが魔界に悪魔討伐に何度か行っていたんだけど、
アンタはその時、父さんが魔界で拾ってきた子供なんだよ」

「……魔界…?悪魔…?……それが何だって言うの?」

おばさんは、私の問い掛けには一切答えることなく、
時々苦しそうに咳き込みながら黙々と話を続ける……。

「父さんと母さんを殺したのは他でもないアンタ自身なんだよ…。エリス」

「…私が…!?」

今までずっと強い信頼を置いているおばさんの言葉だからこそ、
その一言は余計に信じられなかった。

「…あの時もアンタの中の悪魔の血が暴走したんだろうね。
誰にも止められなかった……。
でも、死に際にアンタの父さんと母さんはこう言ったんだよ…」

「…何て?」

「…この子は大切な私達の娘だ。
だから立派に成長するまで見守っててくれ。
ってね。…まったくあんたの父さんと母さんは大した人だよ」

おばさんは力無く苦笑し、そして更に話を続ける。

「でもね、あたしは最初、アンタが気持ち悪くてしょうがなかったんだ。
見た目は人でも中に悪魔が眠ってるんだからね。
何度捨ててしまおうと思ったことか……」

「たはは……そう、だよね…気持ち悪いよね…」

だけど、信頼をおいてきたおばさんの一言だからこそ、
心に強く突き刺さる…。
それが真実なんだとわかるから…。

「でもさ、あたしもしばらくアンタと一緒に暮らしてたら、
情がうつっちまったんだろうね。
アンタのことがかわいくてしょうがなくなってさ」

「…おばさん…」

「この子の中に悪魔なんていない!
あたしが絶対この子を守ってやるんだって思うようになったんだよ」

おばさんの言葉に嬉しくて…、
気がつけば私の瞳から次々と涙が溢れ出してきていた。

「でも、まさか使い魔召喚であんなもんがでてくるだなんてね……」

「…当の私が一番驚いてるよ…」

「そうだろうね…。さて、エリス。よくききな。アンタはね魔物の血を引いている。
だけど、アンタは人間だ。そしてあたしの大切な娘なんだからね?
これだけは忘れるんじゃないよ?」

「うん……、ありがとう。おばさん」

「ふう……ちょっと喋りすぎたね。
あたしゃもう疲れたよ。ちょっとだけ休ませてもらうからね。
いいかい?休むだけだからね」

「うん……」

私は、ただ黙って頷く事しか…出来なかった。

「それじゃ、おやすみ…エリス」

それがおばさんの最後の言葉になった。
私は、その場に泣き崩れた。
そして、そのまま大声で泣いた。泣き続けた…。



私の涙がおさまった頃には雨はやんでいて、外は腹立たしいほどに快晴だった。
私は、町の人達の為に。と、簡単なお墓を噴水の所に一つ作り、
そして、町の入り口でこれからどうすればいいのかボーっと立ち尽くしていた。

考えれば考えるほどにドンドンと涙が溢れだしてくる。
だから私は涙をこらえ空を見上げた。

「賢者の石を見つけたら力を制御出来る様になるので、
賢者の石をみつければいいんですよ」

突然にどこからか声が聞こえてきた。

「誰!?」

驚いて辺りを見回してみたがどこにも誰の姿も見えない。

「ここですよここ。」

「……ん?」

声は足元から聞こえてきている様だった。
私は、試しに立ち上がって自分の足元を見てみる。

するとそこにはまた、あの噴水にぶん投げたはずの古びた本があり、
いつのまにやら私はそれを、自分のお尻の下にひいて座っていたのだ。

「早く開いて下さい〜」

そして声は明らかにその本からしている。

「…………」

非常に怪しくて開きたくなかったが、
これからの行く末を見失っていた私は、
とりあえず言われるがままに本を開いてみる。

「じゃんじゃじゃーん!!」

「なななな!?」

本を開いたとたん、そこからまばゆい光が放たれ、
光が集結し、目の前に丸い形を作り上げていく…。

そして、それは徐々に姿を現し、
最終的には羽根の生えた丸くてぷよぷよした物体が現われる。

「なによあんた!?」

私があまりにも驚き焦っていると、
その丸い物体はこちらを見てニコッと微笑み、こう言った。

「はじめましてご主人様!僕はあなたの使い魔!【セラフィム】です!」

「ご主人様!?使い魔!?」



だがしかし、そのあまりにも面白い容姿に、
腹のそこから笑いがこみ上げてきて仕方が無い。

「あはは!おかっかしー!!こんな情けない使い魔がいますかって!」

私は思いっきりお腹を抱えて大爆笑してしまう。
それを見て自ら使い魔と名乗ったこの丸い奴はぷくーっと膨れた。

「もう!この姿はご主人様が力をつければ、
どんどんとかわっていくんですよ!」

「ほぉ……」

私はぴたっと笑いを止め、使い魔をじっとみつめる。
そして……。

「いひゃいひゃい!なにひゅるんでしゅかごひゅじんひゃまああ!」

おもいっきりひっぱってみた。

「これが成長するねえ……信じられないわ」

私は、ぱっと手を離す。

「全く……!信じられないなら、
自分の目で確かめられるように強くなって下さい!」

そいつは少し怒ったように言っていた。

「あはは!ごめんごめん!
…で、私に何をすれば良いって言ったんだっけ?」

私は笑いすぎて忘れてしまったので、
もう一度きちんと話を聞こうと尋ねてみる。

「えっと、ですね。ご主人様ははっきり言って弱いです」

失礼な奴…とぶっ飛ばしてやりたくなったのは言うまでも無いが、
今は教えてもらう身なので、とりあえず我慢…。

「それでですね、未熟者でも自らの力の制御を出来るようになる【アーティファクト】。
【賢者の石】があるのですよ。っといっても伝説上のアーティファクトですから、
本当にあるかどうかは定かではないのですが、全く無いともいいきれませんのです。

ですから、未熟者のご主人様はこれを手に入れて悪魔神サタンを封印しなくてはなりません。
自分の中から出てきたんですから自分で始末つけなくてはなりませんからね」

随分と勝手にペラペラと喋って、
その上何だかこいつ偉そうでむかつくな。と心から思った。

「そう言えばアンタ。なんでこんな本の中にいたの?」

それを聞くと使い魔はそうそう!と相づちを打ってペラペラと語りだす。
…この短い手でどうやって相づちを打ったのか、
それはご想像にお任せしようと思う…。

「えっとですね、ある人がご主人様の手助けをする様に。
と僕をこの本の中に封印しておいたのですよ。
なぜそんな必要があったかと言うと、ご主人様にはかなりの魔力が秘められていますが、
それは魔族の力を解放した場合のみと言うことなんですね」

「力の解放???」

私が訪ねると、使い魔は、「そのうち出来る様になりますよ」
と、あっさり流してくれてまたもや続けて喋り始める。

「魔族の血の力は、人間が使える魔法くらいなら軽々使えるんですね。
でも、大魔法になると自然界の精霊達と契約しないと使えないものが多々ありまして…。
だから、僕達精霊との更新が得意な使い魔達が、
精霊達と交信をし、魔法を使うための手助けをする。
と言う訳なんですよ!!」

使い魔は聞いてもいない事まで喋べり続け、
結局30分ほど全然関係ない話までおまけで聞かされた。

本当によく喋る奴だと心から思う。
こういう奴をきっと世間では減らず口と言うのであろう。
……何か違う?

「あのさ〜、私の質問に答えて欲しいんだけど……」

私がかったるそうにそう言うと、
使い魔は、はっ!と我に返った様だった。

「…何でアンタが必要だった訳?」

「それは…えっとですね、つまりご主人様の中に眠っているサタンは必ず暴走し、
魔法を使えない状態にされるんじゃないかとある人は踏んだのです。
なぜなら、サタンは元々ご主人様の中にいたわけではなく……」

何だか自慢げに語る使い魔。
こいつの一言はどうもいちいち棘がある様な気がしてならない…。

「でも何かそれって私が絶対それまでに、
抑えられるほど強くなれないみたいな諦めがあったみたいで嫌だな…」

「まぁまぁ、後天的なものなので、どうしうようもないだろうと言う事になったのです。
そこで!僕の登場です。僕は使い魔の中でもかなり上級に属します。
ですからご主人様がいくらちみっちゃい魔力にされたところで、
僕なら精霊達と契約をしなくとも、
早いうちに大魔法をつかわせてあげること位簡単にできるからなんですよ」

本当、こいつ一発ぶん殴っても良いですか?

「でも、本当はサタンが呼び出される前にご主人様と力を合わせて、
サタンを封印しておきたかったんですけどね……」

しみじみと言う。使い魔。しかし、説得力は微妙に無い。
だって、見た目がこれだしね……。

「ふーん…つまりサタンとか言う奴の事が恐かったのね?」

からかうつもりでそう言ってみると、使い魔はどきっとした顔をして、

「そそそ、そんなことないです!」

と慌てて否定している。
どうやら、かなり恐かったようだ…。

「でさ、賢者の石を探すならどこを目指すのがいい訳?」

「そうですね〜。
どうせなら、過去に世界を旅して回ったと言う、
英雄達を尋ねるのがいいかもしれませんね」

そいつは自信満々に答えた。
別に自分が偉いわけじゃないだろうに…。

「は?英雄?そんなのいるの?
でも、仮にいたとしても、どうやって会えって言うの?
アンタ、コネでも持ってるって言うの?」

その言葉に、使い魔はにやりと笑って答えた。

「ふっふっふ〜それは僕にもわかりません!」

私はとりあえず無言で使い魔に数発拳をくれてやった。

「なにするですか〜〜〜!!!」

「うるさい!」

あまりにもアホらしいので私は、とりあえず自分で考えることにする。
冷静に分析してみると、近くに町といっても、この辺りには城が1つしかない。
もし別の町やお城を目指すのだとしたら山を超えたり森を抜けたり凄い大変だ。
だから私ははそこのお城を目指す事に決める。

「よし!行くよ!!」

「どこにですか?」

「北へ…北へ行くの!北の城【ノスト】を目指して行くのよ!」

「何故ですか?」

「……そこに城があるからよ!!」

「…僕はご主人様に従います!!」

かなり長い間があったような気がしたけど、
使い魔は嬉しそうにぱたぱたと羽根を動かして、
私の傍によってきて、そのまま私の肩にのった。

「さあ、私と一緒に私の力の制御方の習得と、
サタンって言う粗大ゴミの片付けに行きましょうか?」

「はいです!!!」

先ほどとは違い力強く、はっきりと使い魔は答える。

そして…私達は静かに町をあとにした。

(おばさん、私絶対に負けないから……)

心の中で強くそう誓って……。